「レジェンド&バタフライ」の辛らつ感想・レビュー(ネタばれ有り)

※木村拓哉に関してがっつり削ってますので、キムタクファンは読まない方が無難です。それでも良い方は読んでくださいね。

レジェンド&バタフライ

レジェンド&バタフライ
☆☆★★★
監督 大友啓史
脚本 古沢良太
配給 東映
上映時間 168分

こんにちは、しんじです。
今回は話題の映画 木村拓哉主演「THE LEGEND & BUTTERFLY」を鑑賞いたしました。
そちらの感想を書こうと思います。

この映画は東映70周年記念映画とする超大作で、制作費が日本映画としては巨額の20億円、そして今やベテラン俳優として君臨する木村拓哉が主演を務め、制作側からは超大作という冠に恥じることない映画でしょう。

この映画は2013年1月27日公開とし、ほんの最近まで映画館で上映していたのに、早くもアマプラに登場です。
本当にどういう事なんでしょうね。
この辺の考察もしてみたいと思います。

ということで、あらすじはもう歴史に書かれている通りなので割愛して、映画の感想をサクッと書きたいと思います。

レジェンド&バタフライ

〇感想

【良かったよ(*´▽`*)】

さて、物語は斎藤道三の娘である濃姫が、織田信長のところに嫁いでくる所から始まります。

若き信長は取り巻きと自由奔放に生きるうつけもの、方や濃姫は斎藤道三にこれまた自由に育てられ、その為に女でありながら男勝りに育ってしまっている。

レジェンド&バタフライ

この対比が素晴らしかったと思う。

これまでの生き方で培われた器の大きさを信長は見せつけられることになる。

この映画の最大の良いところは、信長の数々の武勲は実は信長という駒を動かした濃姫のなすものであったという事。

レジェンド&バタフライ

信長は今までイエスマンの取り巻きの中で自由に生きてきたため、底が浅く、軍略会議でも直ぐ手詰まりになる。
先に頭で考え行動が二の次になってしまうのだ。

だが濃姫は違う。
行動力とともにその中で活路を開いていく。
それこそが天下をとる者の考え方と信長に刷り込ませていくのだ。

また天下を見てその先の海の向こうを見ようとしていたのが濃姫であったことも面白い。

レジェンド&バタフライ

ここがこの映画の最大の魅力であると言えよう。
とても面白いシナリオとなっている。

そしてこの男勝りの濃姫が少し屈折しているところも興味深いところだ。

信長と濃姫がお忍びで下城して町を歩いているとスリにあってしまう。
そのスリは乞食の集落の子供で、2人はこの集落まで追いかけて来るのだが、先に剣を抜き乞食の血しぶきをあげたのが濃姫だというのが面白いですよね。

レジェンド&バタフライ

ここは凄く光っていました。

そして猛った血に、今度は性欲が露わになり信長の上に跨るとか、この辺の少し歪んでいるところを表現しているのは素晴らしかった。

レジェンド&バタフライ

そしてグダグダとラブロマンスの場面を引っ張らないのも個人的にはGOODです!
私は、そういうイチャイチャはいらなくてストーリーを進めてほしい派なので。

と、ここまでは本当に素晴らしいと言ってもよい映画です。

綾瀬はるかの目の動き、表情、所作まで最高の演技だったのではないでしょうか。

レジェンド&バタフライ

ここまでが良い点です。

【最悪じゃ(。-`ω-)】

さて…. お待たせいたしました。
ここから削ります。

先にも言ったように綾瀬はるかの目の動き、表情、所作は本当に良かった。
また声の荒げ方、静め方は俳優力を見させてもらった。

こらっ、木村拓哉。
お前な、表情の作り方のパターンが4種類くらいしかないんじゃないのか?
あの直ぐにきょどるような目の動きやめろよ。
きっと木村拓哉のお得意としているものなのかもしれないけど、それどの映画、ドラマでもやっているだろう。

そして演技が固いんだよ。

木村拓哉ってカメラフレームに入ると自分で決めた演技を型どおりにするでしょ。
もう決めた演技を乱さずやろうとする。

笑う演技は最初に決めたままこう!
怒った演技は決めたとおりにこう!

そんな風に見えるから演技のふり幅がすご~く小さいのですよね。

抑えてしゃべる声はいいだろう。
だけど声を荒げた途端に直ぐに馬脚を現してしまう。
演技幅が小さいから声を荒げると戦国時代劇から一気に現代劇に変わってしまう。
もうちょっと主演じゃない役をいろいろやって演技の幅を広げたほうがいい

それとさ、迫力ある演技って声を荒げる事ではないんですよね。
ゲイリー・オールドマンとかの演技を手本に勉強してください。
内面の迫力をだす演技のね。

そしてその演技の幅が狭くて台無しにしてしまった重要場面がこの場面

 レジェンド&バタフライ

比叡山の容赦ない焼き討ちを濃姫に諫められる信長。

ここはさ、濃姫の野望のままに動いた信長が、合戦の残酷さや政治というものの為に、もはや自由奔放でなくなってしまった悲しみを表現する場面だろ。見事なカッスカスの演技だ。

濃姫の向こうに映る信長のシルエットに悪鬼になるしかない悲哀が全然感じられない。あったとしても10のうち2くらいかな。

あとこれは演出の問題だけどさ、この信長の悲哀を見せるのに足りないところをいくつか挙げさせてもらおう。

まずは対比だよ。

濃姫の野望に手を貸す前、血塗られる前の信長をなぜもっと豪快に描かなかったのか。
私が監督ならうつけものゆえ豪快に笑ったり怒ったり、もっと思うがままの信長を描くけどね。
それなのに木村拓哉の信長は自由にしていた頃もどこか居心地悪そうきょどった目をするんだよね。全然自由を感じない。ただ仲間とじゃれ合っているだけ。

それとさ、だからこそ魔王となった信長は声を荒げてはダメなんだと思う。
怒りさえも縛られ、怒る前に斬るくらいの恐ろしい存在として描かなきゃ、そこから抜け出せない悲哀をだせないじゃないか。

そして「魔王」と呼ばれるまでの場面をなぜすっ飛ばした?

もうちょっと血で染まっていくしかない場面を挟んでいかないと、いきなり心変わりですか? ってなるでしょう。
もしかして上映時間の問題でカットしましたか?

それと前々から指摘している日本映画の悪いところ。
なぜに笑いを挟もうとするのかな?
「前半は明るく→後半はシリアス」にしたかった意図はわかるよ。
でもさ、テレビドラマサイズのコメディを入れないで欲しいな。

コメディで笑いをとろうとするところが浅はか。

前半は単に感情の思うまま生きる豪快な信長を表現すれば、自ずと明るく楽しいものとなったのに。
喜怒哀楽が激しい信長を前半に映すからこそ、後半の魔王に足をつかまれた信長が映えるのにさ。

そしてこれは賛否両論かもしれないけど、本能寺の床の下から抜け出しました→船に乗り航海しました→海の向こうの地を見ました

この場面いる?
途中でタイタニックに入れ変わったかと思いましたよ。

レジェンド&バタフライ

やったとしてもあんなに尺いらないだろ。

そんなにその場面入れたければ、そこからの信長ストーリーにしたらよかったんじゃないかな? まぁ、脚本の善し悪しがはっきりでてしまうのでやらないでしょうけど。

とまぁ、今回も木村拓哉ディスリになってしまいましたけど、本来この映画が★5だとして木村拓哉の演技に★2を奪われて「★3」になったと思ってくだされ。
★2でも甘いよな。
でも映画にはリスペクトするところもあったので、それくらいで。

【なぜ早くもアマプラ? (-。-)y-゜゜゜】

さて、なぜ早くもアマプラで配信したかを考察します。
コロナ渦で海外の新作映画が劇場公開できずにAmazonに権利を売り、配信上映をしていたのは記憶に新しいところですよね。

トゥモローウォー」や「ムーンフォール」がそうです。

  

そのおかげで劇場公開できなかったマイナス収益の補填をすることができた(できたのかな? )

この映画も同じようなものだと思う。

なんせ公開第一週目は1位だったものの二週目からはアニメ映画に追い抜かれてしまい、木村拓哉ファンが一巡してしまうと途端に客入りが悪くなり、結局のところ20億円の製作費で25億円の興行成績しか残せなかった
あれだけ宣伝に莫大な巨費を投じたにも関わらず差し引き5億円の儲けって、あきらかに失敗だった。
つまりは鮮度が落ちないうちにAmazon primeに配信放映権を売り飛ばしてその補填に充てたのでしょうね。
東映側からなのかAmazonからなのかわかりませんがこれはwinwinだったのでしょうかね?(う~ん、微妙

【あなたは気が付いた? ( *´艸`)】

あと、これは小ネタですが、信長が鹿狩りをしていて崖から落ちる場面、私はすぐにわかってしまいました。
あの場所は西伊豆の黄金崎公園の展望です。
ほら、馬の頭のような岩が見えますよね。

レジェンド&バタフライ

あれは「馬ロック」と呼ばれています(下は私が撮影した写真です)

この場所から見える夕陽がとっても綺麗なので是非訪れてみてください。

黄金崎公園からの夕陽

「エール!」の感想・レビュー(ネタバレ有り)

エール!エール!
★★★☆彡
監督 エリック・ラルティゴー
脚本 ヴィクトリア・ベドス
制作国 フランス
上映時間 105分

こんにちは、しんじです。
先週は『CODA あいのうた』で心が洗われたわけですが、この映画はアメリカリメイク版でした。
ならば原作の『エール!』を見る必要がある!
というわけで、今回は『エール!』の感想を書いていきたいと思います。
なお、あらすじはほぼ同じなので、『Coda』と『エール!』の違いを交えながら書いていきたいと思います。
PukuPukuMarine〇感想

良くも悪くもフランス映画の色が出ている映画だと思いました。
僕はそんなに多くのフランス映画を観ているわけではありませんが、どことなく『最強のふたり』と似たような空気感があります。

題材が聴覚障害の人を取り扱っているけれども映画自体は明るく少し楽観的な感じがする作風なのは、おそらくフランスのお国柄が影響しているのではないかと推測します。

Coda』では家族の仕事漁師で、それは濁った海の上で船という囲まれた空間、そして家族を取り巻く環境は若干の差別があり、家族はあまり社交的ではない。

エール!

それに対し『エール!』牧草地という広い空間での酪農で作ったチーズや野菜を市場で売るのが仕事で、取り巻く環境は障害者への理解ある人々を多く登場させ、お父さんは今の現状を変えるため選挙に立候補するという前向きな家族となっている。

エール!

当然、そんな家族だから映画自体は明るく進んでいく。
だが、このベクトルが変るのが娘のポーラがパリへ歌の夢を持ち始めてからだ。

突如として家族は悲観的になっていく。
特に母親の取り乱しようは『Coda』以上かもしれない。

エール!

自分たちだけが田舎町に取り残され、自分たちにはできない歌を歌うという娘に若干嫉妬をするというね。

この陽と陰の対比により家族の心情を描いていくのが『エール!』の特徴だろう。

娘ポーラの心情も家族がうまくいっている時はさほど腹に抱える鬱憤などは表現されていない。これが顕著に表れるのは、やはり歌というものに夢や希望を持ち始めてからだ。

Coda』と比べると『エール!』の方が現実的に思える世界だと思った。

しかし、やはり映画に期待するのはもっとエモーショナルなもの。
そこを上手く表現したのは『Coda』だと思う。

あと『エール!』には家族の中にポーラを味方をするの存在がないのは寂しいところだ。
家族がある程度うまくいっている為に存在させる意味もなかったのだろう。

この『エール!』の中で唯一その存在感で優っていたのは音楽の先生だ。

エール!

プライドと優しさとちょっぴりの厳しさを持つ先生は『Coda』のようにわざとらしい存在ではなかったのがよかった。
Coda』の先生は、はっきりいって先生ぽくなかったですからね。

コーラス部の発表会の演出などは『エール!』で用いた者なんですね。

『エール!』という優れた素材をさらに上手に仕上げたのが『Coda』という感じがしました。

でもきっとフランス映画が好きな人は『エール!』の方が好きだと思います

僕はエモーショナルな映画が好きなので『Coda』の方が好きでした。

Coda』を観て感動した人は是非、その原作の良さも知ってほしいという思いです。
お勧めですよ

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「Coda あいのうた」の感想・レビュー(ネタバレ有り)

codaCoda コーダ あいのうた
★★★★★プラス★★★★★
原作「エール!」
監督・脚本 シアン・ヘダー
配給 ギャガ
上映時間 111分

こんにちは、しんじです。
最近、少し映画レビューは滞っていますが、しっかりとこの映画レビューのページは続けて行こうと思ってます。

さて、今日のレビューは「Coda あいのうた」です。
この映画は2021年のアメリカの映画で、フランス映画「エール!」のリメイク版です。

聴覚障害という凄くデリケートな題材の中、コメディと愛を上手く表現した傑作映画です。
もう観られた方も多いのではないでしょうか?

PukuPukuMarine

あらすじ 感想

〇あらすじ
アメリカの港町、家族で漁師を営むロッシ家。
Coda

家族は娘のルビー以外は聴覚障害を持っていた。
これは特別なものではなく自然の流れ、家族は仕事でもプライベートでも唯一耳が聞こえる娘ルビーを頼りとしていた。

そして思春期を迎えるルビーもそれを当たり前と受け入れながらも鬱積したものを抑えつけ隠していた。

高校生のルビーは気になる男の子が選択授業で合唱クラスに入るのを聞き、その後を追い合唱クラスを選択する。
もともと音楽が好きで船の上でも歌を歌っていたルビーの歌声に音楽教師ベルナルドは可能性を見出す。
coda

ベルナルドの特別授業を受けながらボストンの音楽学校へ進む夢を心の中で育むルビー。
音楽はルビーにとって心の解放そのものだった。
そしてその音楽によって家族からの束縛からも解放される….

しかしルビーは家族を愛し、また父、母、兄もまたルビーを愛していることも知っている。

家族を捨てることはできず、夢をあきらめようとするルビー。
彼女の本心を知りながらルビーに頼らざるを得ない家族。

兄のレオは自分を犠牲にするルビーに怒る。

そしてルビーの合唱クラスの発表会を観に行くロッシ家族。
Coda

父フランクは赤いドレスを着て歌うロビー、そして周りの観客を観て何かを思う。

星空の下、ルビーに頼みごとをする。
ルビー、俺のために今ここでもう一度歌ってくれ。

Coda

父フランクは手のひらを喉元にあてルビーの歌声を感じる。

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あらすじ 感想

〇感想
これは是非観てほしい映画です。
ここ何年間で抜きんでる映画だと思いました。

父、母、兄が三者三様、心に抱える葛藤やルビーに対する想いがそれぞれ違っている。

それが映画を通して少しずつ見えて来る素晴らしさよ。

僕はこの映画で3カ所涙が出た。

その中のひとつ、兄レオが自己犠牲をするルビーに怒る場面だ。
そこで兄がわざと嫌われるようにルビーをののしるのは心に刺さった。
Coda

星空の下で父だけに歌う場面も素晴らしかった。
これはとにかく合唱発表会でのあの演出があったからこその場面ですね。
映画見ながら感心しました。
素晴らしい演出ですね。

そしてラストの大学のオーディション。
Coda

もう崩壊です。
とめどなく流れる涙
これは大げさではなく涙で心を洗いたい人は絶対に観たほうがいいです。

超々お勧めです。
評価は5+αですね。
こういう素晴らしい映画に出会えるから映画レビューはやめられません。
サウンドトラックも欲しくなる映画ですね

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「人生の動かし方」と「最強のふたり」を見比べてみた感想(ネタバレ有り)

新年あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いします。

元旦の朝から映画三昧です。
本日は「人生の動かし方」と「最強のふたり」を観ました。
タイトルは全然違いますが、内容はほぼ同じです。
というのも「人生の動かし方」はフランス映画「最強のふたり」のリメイク版なんです。
物語は実話をベースに書かれたものらしいですよ。
今回はそれぞれの映画の違いと感想について書いてみたいと思います。

まず、僕はこの2つの映画を吹替え版で観たことを前提に感想を書きます。
「人生の動かし方」はどうかはわからないけど「最強のふたり」に関しては吹替え版で観ることをお勧めします
それはドリス役のオマール・シーの声よりも吹替えした菅原正志さんの声の方が役にあっているからです。
PukuPukuMarine

〇あらすじ
仕事もせずに明日の生活もどうなるかわからない男ドリス(リメイク版:デル)は雇用保険金の受取条件として求職活動をする。
職業安定所から指定された求職口のひとつに大富豪の家の仕事があった。
それは首下から麻痺になる主人の介助をする仕事だ。
ただ面接を受けた証拠だけ欲しかったドリスだが、主人フィリップの気まぐれで採用となってしまう。
そして金はあるが不自由な暮らしをするフィリップ金がなくて不自由な暮らしをするドリスの奇妙な関係が始まる。

人生の動かし方 最強の二人

人生の動かし方人生の動かし方
★★★☆☆
監督 ニール・バーガー
脚本 ジョン・ハートメア
配給 ショウゲート
上映時間 126分

この映画は2019年に公開されていています。
キャスト
介助人デル・スコット:ケヴィン・ハート
主人フィリップ・ラカット:ブライアン・クランストン
イヴォンヌ・ペンドルトン:ニコール・キッドマン

リメイク版では介助人デルの年齢が中年男性となっています。
人生の動かし方

生まれついた環境から刑務所を行き来する人生を送っています。
仕事も長続きせず、全てが周りのせいと思っている典型的なクズな男です。
そのため女房には愛想をつかされ、子供にも無視されて別居中です。
このデルを見ていると、もうこの年齢で立ち直れないのなら更生するのは無理じゃないかと思います。
かなり自分中心の考え方をするため、相手の気持ちを考えずに好き勝手な言動が目立ちます。

一方、フィリップは妻を先に亡くし、その上、重いハンディキャップを背負う人生に疲れてしまっています。
人生の動かし方

彼は生きる事を手放す機会を待っている。

発作により死ぬのならそれも良いと考え、いいかげんな男であるデルを介助人として雇うのです。

このリメイク版は2人がかなりマイナスからスタートしている印象を受けます。

何事もきっちりと重く考えるフィリップは、デルのいいかげんさに自分の鬱積した想いを解放するはけ口をみつけます。

その象徴的な場面がオペラ鑑賞の場面でしょう。
デルが劇場で木に扮した役者が歌を歌うことに大笑いをするんですが、こよなくオペラを好んでいたフィリップは、今まで考えたことなかったでしょう。
木が歌を歌うその滑稽な光景に。

フィリップは耐えきれず笑ってしまいます。

デルはフィリップの常識を少しずつ壊して再構築してくれる人物だったのです。

ドラマはそのような感じで進んでいるのですが、僕にはどうしてもこのデルに好感を持つことができなかった。
まずはあまりにも自分の考えをフィリップに押し付けるところがたまらなく嫌だった。
特に文通相手に電話してしまう場面などは、あまりにも強引だ。
そして、フィリップが女性と実際に会うこととなり失敗してしまう。
当然、フィリップは「だから言ったんだ。」とイラつきからデルを責めると、デルがこういうんです・
俺は電話をかけただけだ。話をしたのはあんたの意志だぜ。
まるで俺には何の責任もない。悪いのはあんただ。と言っているような口ぶり。

これってデルの生きざまを表しているようで嫌悪感が増してしまいました。

当然、これで機嫌を損ねてデルはクビになります。
まぁ、当然でしょ。
同情もできませんでしたね。

それと疼痛で苦しむフィリップにマリファナを勧める場面も良くなかったです。
フランス版では軽い感じでマリファナを吸わせていたのですが、アメリカ版は下手したらさらに発展して麻薬中毒にしてしまいそうな描写の仕方をしています。
終始デルがマリファナの話をするのにも好感が持てなかったよ。

デル役のケヴィン・ハート少しクセが強すぎます。
「何だってんだ。」て言い訳がましい顔がちょっとイラっとする。
これくらい口が動く男なら若い頃のエディ・マーフィのような軽さがある俳優の方が良かったと思う。

このリメイク版がフランス版と大きく違うところはヒロインを作ったところです。
イヴォンヌはフランス版では使用人のおばちゃんでしたが、この映画ではフィリップの事務的な仕事をする女性として描かれています。
人生の動かし方

しかも眼鏡をかけたニコール・キッドマンなんてちょっと綺麗すぎるだろ
ただ仕事として働く女性として振舞うが、思い返せば誰よりもフィリップを心配しいつでもフィリップのそばで支えていた女性

それをラストにフィリップに気づかせる。
この映画において一番のGood Jobだったぜ!デル!

この映画で実話のデル(ドリス)が会社社長になったことを映画の中で描いていましたね。
彼はフィリップに解雇されたあと売った絵の金を元手に介助器具の会社を設立した様子が描かれています。
人生の動かし方

映画の中でフィリップがビジネスプランの質問をデルにしていたことが、ここで生かされていました。

でも中年まで半端者だったデルが会社社長で成功するっていうのは少し現実味が薄いように感じました。
特に映画で描かれたデルの性格だとね。

しかしながら、ラストにはフィリップとイヴォンヌが良い関係を再構築できたようでとてもハッピーな気持ちになれました。

人生の動かし方

この映画でもやっぱりブライアン・クランストンの演技は素晴らしかったですよ。

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人生の動かし方 最強の二人

最強のふたり最強のふたり(吹替え版
★★★★★
監督・脚本 エリック・トレダノ
製作国 フランス
配給 ギャガ
上映時間 112分

さぁ、こちらが本家本元「最強のふたり」です。
2011年に公開された映画です。

キャスト
介助人ドリス:オマール・シー
主人フィリップ:フランソワ・クリュゼ

「人生の動かし方」では介助人デルが中年男にしたのはリメイクを作るうえで改悪だと思えます。
それをこの映画が語っています。

この映画のドリスは年齢として20~25歳くらいの青年です。
最強のふたり

彼は養子であるがため、家庭の中に居場所を無くしてしまい、その上フランスの就職難のため職に就けない若者として描かれています。
ドリスの家は裕福ではなく夜になると団地の下に悪友が集まってきます。

ドリスが今、一番の気がかりにしているのはギャングとかかわりを持つ弟のことだ。

一方この映画のフィリップはリメイク版と違い由緒正しい大富豪です。
豪邸に住み使用人を雇っている本物の大富豪です。
最強のふたり

リメイク版のフィリップは自分で稼いだお金で大金持ちとなり使用人を雇っているのですが、が違います。

この格式がこの映画の大きなカギとなるのです。

介助人として働くことになるドリスは今まで自分がいた世界と違う、それはまるで異世界の中に入り込んだような気持ちになります。
それが描かれているのがバスルームの場面です。
自分の家の小さなお風呂と違いそれは映画などの世界でしか目にしたことがない豪華で気品のあるバスルームです。
最強のふたり

リメイク版のようにいろいろと悪い世界を知った中年男と違い、ドリスは自分が住む環境以外の事を知らない若者なのです。

ドリスはフィリップの介助をすることにより今まで触れたことのない絵画・音楽・歌劇などに触れていきます。
最強のふたり

そして粗暴な彼の中に格式ある教養が備わっていきます。

それは彼の心を豊かにしていき、人とのかかわり方が変わっていきます。
それをこの映画の中では描いているのです。

一方フィリップは重いハンディキャップにより性格が気難しくなっています。
しかしリメイク版ほど悲観的にはなっていません。
むしろこの映画で描かれているのはハンディキャップを持っていることで腫物を触るような周りの態度にストレスを感じていることです。

いままで雇った介助人はどいつもこいつもフィリップという人間ではなく介助を必要とする患者のような扱いをしていたのでしょう。

しかしドリスは違った。
彼の性格は粗暴であるようだが、フィリップが動けない事をネタにブラックジョークを言って笑うのだ。
それはまるで悪友に接するようにだ。
患者としてではなく、「体が動かないフィリップ」として接するドリスに居心地の良さを感じるのだ。

そしてこのドリス役のオマール・シーが大きな体でかっこいいんです。
吹替えで観ると声もかっこよくて本当に吹替え版お勧めですよ。
このちょっと怖い兄ちゃんがフィリップの娘を振った男に脅しをかける場面なんか、なんかスッとしてニヤっとできます。
最強のふたり

それにダンス場面もキマッってましたよ。

ドリスが介助人を辞める理由もリメイク版みたいな後味の悪いものでなく、気がかりな弟の面倒を見るための前向きなものです。
弟のことについてギャングと話付けるところなんか男気を感じます。

ドリスが辞めた後、フィリップは再び気難しくなるのだけど、心配したドリスが「なんだ、そのヒゲは。かっこりーから剃れ。」なんて白い歯を浮かべて会いに来るところなんか、友達が訪ねてきたみたいで清々しいですよ。
最強のふたり

文通相手にドリスが強引に電話するのはリメイク版と一緒でした。
ただこちらのフィリップの手紙は確かに酷いもので進展なんて期待できるものではなかったです。
そんなの書いているんなら、電話したほうがいい。」という理由だ。

そして文通友達から電話友達に発展。
この辺は丁寧に描いていましたね。

でも美人な文通友達に会う勇気をフィリップは持つことができませんでしたね。

ラストのその白い歯を浮かべたドリスが、2人の会う機会を作ってしまうところなんか、「やれやれ手間がかかるぜ、俺のダチは。」って感じでさわやかでした。

最強のふたり

この映画、フィリップと出会い教養を身に着けたドリスには未来を感じることができます。
刑務所を行ったり来たりの中年男のリメイク版よりも全然さわやかにみることができました。

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人生の動かし方 最強の二人

〇結論
2つの映画、どちらを観るか迷っているあなた。
お勧めは「最強のふたり」の吹替え版です。
絶対に面白い映画です!!
お勧めです。

そして時間に余裕があるあなた。
2つの映画を見比べるのもおもしろいですよ。
リメイク版も悪くない出来栄えですので。

ちなみに、フランス版のイヴォンヌはフィリップとドリスの良き理解者である屋敷の使用人のおばちゃんです。
とってもユニークで良いキャラクターしてますよ。
最強のふたり

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「ブラックブック」の感想・レビュー(ネタバレ少な目)

ブラックブックブラックブック
★★★★☆彡
監督・脚本 ポール・バーホーベン
製作国 オランダ
配給 ハピネット
上映時間 144分

こんにちは、しんじです。
今日は大みそかです。
今はちょうど18:00。
たぶんこの記事をUPするころには新年になっているかもしれませんね。

さて、今回、感想を書く映画は「ブラックブック」です。
監督は「トータル・リコール」「ロボコップ(1987)」「スターシップトゥルーパーズ」でメガホンをとったポール・バーホーベン監督です。
しかし、映画製作国はアメリカではなくオランダ映画なんです。
たぶん監督の思い入れのある映画なのだと思います。
監督がオランダ人なので。
今回は初見でAmazonプライムビデオでの鑑賞となります。
PukuPukuMarine

あらすじ 感想

〇あらすじ
スエズ動乱直前のイスラエルにて教師をしているラヘル。
観光客の女性に声を掛けられる。

ブラックブック

その女性は第二次世界大戦終戦直前のオランダにて知り合った女性だ。
その日、彼女は川辺に佇みながら当時の事を思い出していた。

ドイツの占領下のオランダにてユダヤ人のラヘルはナチスから身を隠しながら暮らしていた。
ある日、安全な地域に逃げるためにレジスタンスの男の手引きで家族と共に船に乗る。
だが、それはナチスの罠だった。

ブラックブック

家族もろとも船に乗ったユダヤ人は皆殺しにされ金銀・金目のものをはぎ取られる
何とか難を逃れたラヘルは助けてくれたレジスタンスの仲間になり、スパイ活動を始める。
ラヘルは名前をエリスに変え金髪の女性となりドイツ軍諜報部のムンツェ大尉の愛人になる。

ブラックブック

しかしエリスの心は次第にムンツェ大尉に惹かれ始める・・・
レジスタンスとムンツェ大尉への愛のはざまで裏切りが裏切りを呼ぶ事態へとなっていく。

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あらすじ 感想

〇感想
いやいや二転三転するこの映画は大好物な映画でした。
まだ観ていない人のために、なるべくネタバレ少な目で感想を書きたいと思います。

ナチスから逃れ逃れた女性の物語で思いだすのが、タランティーノ監督の「イングロリアスバスターズ」ですが、この映画はあそこまで大げさなカタルシスを表現する映画ではないです。

もっとそっと大人の色っぽさがにじみ出ている印象を受ける映画でした。
エリスのもとに2人の男性が現れます。
レジスタンスの医者でありリーダー的存在のハンス・アッカーマン

ブラックブック

そしてもうひとりがドイツ軍諜報部ムンツェ大尉

ブラックブック

この2人の男性のもとで揺れ動くエリスの人生
当然、憎きナチス将校などに心を許すはずもないはずなのだが、そこにレジスタンスである前にひとりの女性として揺れる心を描いているのが他の映画と違うところでした。

そしてそこになぜか大人の色気を感じてしまいました。

ドイツ基地には家族の仇であるフランケン中尉がいて、その高ぶった感情を抑える場がムンツェ大尉の胸の中だったのかもしれないですね。

レジスタンスの作戦の失敗、ドイツ軍将校の対立、いろいろな要素でエリスの立場が二転三転していく。

この映画では終戦を迎え、オランダ国内に残されたドイツ軍に協力していた市民がどのような扱いをされていたかを少し描いていました。

ブラックブック

その中にエリスは放り込まれて、彼女も酷い虐待を受ける。
その様子はまるでナチス親衛隊がユダヤ市民に対して行う虐待と大差がなかった

戦争はどちらに転んでもやはり人間の残虐さを浮き彫りにするものだなと感じました。

この映画、エリスがしっかりと自分を陥れた人物に片を付けるのですが、その時のエリスの表情が凄くいいんですよ。

ブラックブック

実際、様々な酷い目に合ってきた人はこんな表情でネジをしめそうです。
思いがひしひし伝わってきます。

苦しみに終わりはないの?

最愛の人物の死を知ったエリスが叫びます。
この映画のラストシーン、まるでこの言葉を皮肉っているようでした。

ブラックブック

最後の爆撃の音は次の戦争の狼煙の音だそうです。
その戦争は第二次中東戦争=スエズ動乱というそうですよ。

愛と裏切りが入り混じった第二次世界大戦下のスパイ映画。
凄く面白い映画でした。
144分という長編ですが中身が濃い時間をすごすことができます。
年末年始にひとりで映画を観る人には超おススメですよ。

あらすじ 感想
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