MERU/メルー
★★★★★プラス★
製作・監督 ジミー・チン/エリザベス・チャイ・ヴァサルヘリィ
撮影 ジミー・チン/レナン・オズターク
配給 Music Box Films
上映時間 87分
こんにちは、しんじです。
今回は山岳ドキュメント映画「MERU/メルー」の感想を書きます。
この映画は完全にドキュメンタリーです。
起こったことなどリアルタイムで撮影していたようです。
監督のジミー・チン自身が映画にも登場する登山チームのひとりであり、彼の構想の中ですでに映画として作り上げるつもりだったようです。
そのため、ヒマラヤ山脈のMERUにそびえるシャークフィンからの登頂を成功させるまでの出来事が事細かに撮影されています。
「事実は小説よりも奇なり」という言葉があるように、この映画のストーリーは1本の創作映画を越えている内容になっています。
こんなにドラマティックな内容になっているとは思ってもいませんでした。
〇あらすじ&感想
感想を書く前に、まず、僕は海を潜るダイバーです。
この前提はおそらくこの映画をかなり贔屓する理由になってしまうでしょう。
スカイダイバー、アルピニスト、ダイバー、もしくは飛行士などもこの映画に親近感を覚える部分があるんじゃないかと思います。
僕など映画に登場するトップクライマーなどと比べれば、限られた安全な場所で潜っているダイバーなのですが、彼らが言っていることを少しは肌で感じることもあります。
もともと海の中は人間が生きる環境じゃないので頼れるのは器材とバディ(相棒)です。
そのバディと長年潜れば潜るだけ信頼関係が強くなっていきます。
それは依存とは違うものでそこにある信頼感が自分の心と体を自由にしてくれるのです。
その余裕が海での判断を正しいものに導いてくれます。
この映画ではトップクライマーのコンラッド・アンカーとジミー・チンがその関係にあります。
10年もの間、数々の山をともに登った彼らの絆はそうとうなものだと思います。
そこに新参者と言えるレナン・オズタークが参加します。
コンラッドとジミーはチームであり師弟の関係でもあります。
ジミーにコンラッドが推薦するレナン・オズタークの参加を反対する理由は何もありません。
むしろレナン・オズタークにはかなりのプレッシャーだったかもしれませんね。
そんなレナンはその想像を絶する過酷さに山頂近くで弱音を吐くようになります。
「もう食料も残りわずかで、きっと明日には中止になるだろう。そう考えるとうれしかった。」と彼はインタビューで答えています。
でも翌朝、コンラッドとジミーは黙々と登山を続けるんです。
「クレイジー」「ファッ〇」彼はつぶやいたかはわからないけど・・・いやつぶやいたでしょう。
そう思えるような環境下にいるのが映画を通じて感じることができます。
崖に吊るすテント(ポータレッジ)だって!??
正気じゃない!
そんな環境での登山は本当に想像を超えていました。
苦難の末の登山も山頂まであとわずか100mで断念せざるを得なくなってしまう。
コンラッドはリスクを測りにかけて選択しました。
これってかなり勇気があることだと思います。
行く勇気よりも行かない勇気のほうが難しいことってある。
「行けるはずだ」はチェレンジと無謀の両方に当てはまる言葉ですから。
この決断をするコンラッドと彼の選択に敬意を示すジミーが凄くかっこいい。
そして3年後に再チャレンジするのですが、その3年の間に起きた出来事がすさまじすぎるのです。
MERU挑戦に失敗した後、ジミーとレナンは一緒に数々の山を登り、信頼関係を築いていきます。
ある雪山の撮影でレナンが転落事故を起こし頭蓋骨陥没と頸椎の骨折をしてしまうのです。
この転落事故はジミーの目の前で起きた。
そして病院で入院するレナンが安定したころに、今度はジミーが大雪崩に巻き込まれる事故にあいます。
ジミーは九死に一生を得るのだが、それが彼の心に大きな影響を及ぼしてしまう。
その2人がMERUに再挑戦するまでのことが、凄くドラマティックに描かれています。
そしてコンラッドのバックストーリーも凄いものでした。
やがてこの登山に込められた意味は3つの意味を持つことになります。
成功したときのジミーの雄たけび、レナンの笑顔、そしてコンラッドの口から洩れた言葉がそれを表しています。
凄く感動しました。
映画の脚本のようなこのストーリーとこの圧倒的な映像美。
きっとこの映画の虜になった人も少なくないと思う。
冒頭にも書きましたが僕はダイバーなのでちょっぴりこの映画を贔屓目でみているかもしれません。
コンラッド、ジミー、レナンが凄い人でかっこいい男に見えます。
しかし、そういうものに興味がない人には、もしかしたら愚かしい、意味のないことに思うかもしれません。
もしくはその中間点のひともいるかな。
ある意味ふり幅が大きい映画とも言えなくもないです。
ただ興味がない人は始めからこの映画を観る選択はしないでしょう。
このドキュメンタリー映画を観ようと思った人たちには大満足する映画だと確信します。
凄くお勧めの映画です。
コロナで自粛中の人にもこの映画はいいかもしれません。
この映画の映像は素晴らしいので4K・8Kテレビだったらもっとすばらしいのだろうなぁ。
僕はパソコンの画面でみても素晴らしく感じたくらいですからね。
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