罪の声
★★★★★
原作 塩田武士『罪の声』
監督 土井裕泰
脚本 野木亜紀子
配給 東宝
上映時間 142分
こんにちは、しんじです。
今回は日本の社会派映画『罪の声』の感想を書きます。
皆さん、グリコ森永事件をご存じでしょうか。
僕が中学生くらいの事件だったかな。店頭に並ぶお菓子に劇薬の青酸ソーダか何かを混入した犯人が食品会社を脅迫するという事件です。
『キツネ目の男』はあまりにも有名でマスメディアは連日『キツネ目の男』とは?ばかりを報道するあまりに事件の真の部分を見逃して報道していたようにも感じています。
それに『キツネ目の男』ばかりを報道するあまりに目つきの鋭い人が「あの人怪しくない?」と根拠のない噂で被害にあった方もいるくらいでした。
犯人グループも執拗で何度も警察や世間を煽るような声明をだしたりして時には愉快犯ではないのかという声明まででましたよね。
さて、今回、この映画を観て思い出したのですが、そうでしたね..犯行指示に少年、女性の声を使っていました。
この映画は何も知らずに大事件に加担させられた子供たちにスポットを当てた映画となっています。
当時の事件を知る人には非常に興味深い映画となっています。
あらすじ | 感想 |
家族3人でつつましく生きている曽根俊也(星野源)はスーツの仕立て屋。
ある日、押し入れの中から通帳とカセットテープを発見する。
通帳は事細かにびっしり文字で埋め尽くされているが全文英語だ。
ただすぐ読める文字もあった。
「GINGA」「MANDO」の文字。
ネットで検索すると1984年のギンガ萬堂事件に行き当たる。
クラマ天狗と名乗る犯人グループが毒入りのお菓子をばらまくとお菓子メーカーを脅迫するという事件だ。
俊也はネットに張られた犯人が使った犯行指示の音声動画を再生する。
そこに収められた声。
俊也は見つけたカセットテープを慌てて再生する。
そのカセットテープは幼少の頃の俊也の声で犯行指示が収められたマスターテープだった。
知らずに犯罪に使われた自分の声。
事件の真相を確かめようと俊也は自らそのメモと関わった犯行に関わっている叔父の足取りを追う。
そして同時期に過去の事件を取材する大日新聞の阿久津(小栗旬)と交差する。
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あらすじ | 感想 |
〇感想
久々の日本映画がビタッと来たものに出会えました。
もう、カセットテープの声を追うなんてゾクゾクします。
少しホラー映画のような怖ささえも感じてしまいます。
だけど映画の軸はしっかりと過去のグリコ森永事件に迫るような内容になっています。
内容は過去に散々と推察したドキュメンタリーと重なる部分が多いのですが、それを俳優たちがしっかりとした演技力で描いているところが素晴らしいです。
犯人の目的は実は現金ではなかったのではないかという推察は事件からかなりの年数がでてから言われたように記憶しています。
株操作です。
この映画ははっきりいって2部構成になっているようにも感じました。
第1部はグリコ森永事件の真相はこうだったのではないかというもの。
第2部は『犯行に使われた子供たちの人生は?』というものでここからは作者の完全なるフィクションとなっています。
この子供たちの人生はとても痛ましく描かれているのですが、映画前半とガラッと映画の感じが変わってしまったのが気になるところでした。
完全なフィクションになった途端に昔からある日本映画の匂いしてきます。
ヤクザが登場しそれに関わった家族の悲惨な末路というものです。
この描き方が少し古臭くて『ああ、日本映画….』って感じになってしまいましたね。
でも、時代背景が1984年のどっぷり昭和なので仕方がないのかもしれないですが、この辺は平成生まれの人たちはどのように見えるのでしょうね。
個人的に好きな場面は記者の阿久津が「真実を明らかにすることに意義があります」というセリフに俊也が噛みつく場面は凄くよかったです。
「意義」ってなんでしょうね。
映画はラストのほうに近づくにつれて作者か監督かはわからないけど社会思想的なものが入ってきます。
学生運動とその過激派の権力・社会への反抗がいかに虚しいものなのかを映画を通して語り始める内容となります。
もしかしたら2022年に刑期を終え刑務所から出てきた日本赤軍最高幹部の人を意識しての事だったのかは定かではありません。
自分の思想を満足させるための犯行の裏には未来を無くされた方々がたくさんいる。
そんな感じで語る映画の人物が何か重なるんですよね。
ということで最後にはグリコ森永事件の社会派サスペンス映画が少し混じり気のあるラストで処理されているようで気になる部分ではありました。
それと一番ラストは「スーツ、お願いします」と笑顔でスパンと終わらせたほうが味わい深かったのに惜しいなって感じでした。
でもすごく見ごたえがあってグイグイと引き込まれました。
141分を余すことなく観ることができる素晴らしい映画でした。
変に笑わせようとする変なコメディを入れる昨今のお寒い日本映画とは全然違います。
社会派映画としてサスペンス映画として、とても光る映画です。
お勧めですよ。
あらすじ | 感想 |
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