それでも夜は明ける
★★★★★
原作 ソロモン・ノーサップ「12 Years a Slave」
監督 スティーヴ・マックイーン
脚本 ジョン・リドリー
製作会社 プランBエンターテインメント 他
配給 ギャガ
上映時間 134分
こんにちは、しんじです。
今回は「それでも夜は明ける」の感想を書きます。
この映画は1841年にニューヨークに住む音楽家ソロモン・ノーサップ氏の実の起きた出来事を映画化した作品です。
この映画の内容はアメリカの黒人奴隷制度に向き合ったものとなっています。
しかし、今もアメリカ内にはこの病魔が巣くっているようで、製作にあたってはいろいろと問題があったようです。
これについては後に触れてみようと思います。
※映画の内容から一部、不適切と思われるような表記があるかもですがお許しください。
あらすじ | 感想 |
〇あらすじ
1841年、ニューヨークに住む音楽家ソロモン・ノーサップ(キウェテル・イジョフォー)は自由権利もつアフリカ系アメリカ人だ。
家があり妻と子供2人と幸せに暮らしていた。
そんなソロモンに仕事の依頼があった。
街を渡り歩くサーカスの興行においてバイオリンの演奏を頼まれたのだ。
熱く興行内容を語る2人。
その夜、打ち合わせのレストランへ行き陽気に酒を酌み交わしていた。
朝、目が覚めると手首、足首を重たい鎖が自由を奪っていた。
彼は騙されて南部の奴隷商人に売られてしまったのだ。
「これは何かの間違いだ。街に行けば私の自由証明書がある。それを見ればわかってもらえる。」
「簡単な話だ。今、見せろ。お前は奴隷のニガーなんだ。」
固く太い棒がへし折れるほど背中を殴られ、服が裂け、皮がひきちぎれ、血しぶきが上がるほど鞭でたたかれる。
ソロモンが最初に売られたのは材木商のウィリアム・フォード(ベネディクト・カンバーバッチ)の屋敷だった。
ウィリアムは南部の主としては穏やかな性格をもつ人物だった。
材木運びの仕事において学のあるソロモンは効率的な方法をウィリアムに進言する。
提案した川を利用した運搬方法にウィリアムは深く感心をする。
その礼としてヴァイオリンを与えるほどだった。
だが優秀すぎるソロモンは屋敷で働く白人監督たちの面目をつぶしてしまう。
理不尽な嫌がらせ、さらには首くくりのリンチを受ける。
ソロモンの命が続く限りこのリンチは終わらない。
そう察したウィリアムは命を救う方法として止む無くエドウィン・エップスへソロモンを売り飛ばした。
エドウィン・エップス(マイケル・ファスベンダー)はウィリアムとは正反対で、強欲でとても冷酷な男だった。
綿花栽培を生業とするエップスは奴隷に鞭をうつことで働かせていた。
そこでは過労で命を落とす奴隷もいるほどだ。
エドウィンは女奴隷からお気に入りをつくる性癖も持ち合わせ、嫉妬に狂う妻メアリー・エップスも奴隷たちを苦しめていた。
そんな欲望と嫉妬にまみれるエップス家は独占欲だけは強かった。
決して所有物を離さない。
そんな苦しい日々、ソロモンの諦めない心の炎は消えかける。
そして何年の月日が過ぎたであろうか。
エップス家の小屋改修にひとりの男が訪れた。
その男の名はカナダ出身のサミュエル・バス(ブラッド・ピット)
改修工事のひと時、サミュエルはエドウィンに奴隷の労働環境について提言をしていた。
「奴隷も人間だ。」
サミュエルは理不尽な奴隷制度に反対する考えを持っていた。
いままで、何度として裏切られたことだろう・・・
だが、サミュエルの目をみたソロモンは、この男に希望を託した。
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あらすじ | 感想 |
〇感想
「ハリエット」に見ることができなかった部分を見事に描いている映画でした。
素晴らしい👏
決して黒人が虐待を受けている場面が見たいわけではない。
だけど、この見たくはない部分を見せなければ、奴隷制度に苦しめられていた黒人の苦しみや悲しみを伝えることは難しいのです。
人間が残酷なことする事実から目を背けてはいけないと思う。
人は利権を貪るし、正しいと思っている事でも黙って見過ごすこともある。
サミュエル・バスが言います。
「正直、僕は怖い。自分が可愛いんだ。」
僕はこの言葉は真意をついていると思う。
ある意味、この映画の最大のテーマであると言ってもいいと思う。
間違いを「間違い」と訴える事はとても怖いことだ。
勇気のいることだ。
南部に住む人間でも奴隷制度が本当は人として間違っていると思っていた人がいたのかもしれない。
その一人がウィリアムという心が優しい人物。
彼は正義感やさしさを持っているが、南部の仕来りや大きな流れには反抗することなどできはしない。
もう一人がエドウィン・エップスだ。
彼は所有物とし奴隷を扱い、鞭をうつ残酷な人物だ。
だが、彼の心があれほど荒れているのはなぜだろう。
何をしても心が満たされない彼は奴隷の女を抱いてみる。
それでも満たされることのない心。
ウィリアムが良い人物と描かれているけど、実はどちらの人物も「自分可愛さのレベル」では同じなのだと思う。
どちらかというと満たされないエドウィン・エップスの心こそ注目すべき点なのかもしれません☝
それにマイケル・ファスベンダーが最も素晴らしい演技をしています。
この映画、134分という時間を使い、人が息をのむような場間つくりあげた映画だと思いました。
例えば、惜しみなく尺を使いソロモンの首くくりの場面をもっとも恐ろしい場面に作りました。
リンチによりつま先のみで命をつなぐソロモン。
うめき声をあげるソロモン。
時期に小屋から奴隷がわさわさと出てきます。
しかし、わき目で見るも、いつもと変わらない仕事をいつもと同じ様に始めます。
この場面が異様に恐ろしいです🥶
ここにスティーヴ・マックイーン監督の才能が垣間見えますね。
この作品は「ハリエット」のように煙に巻いたような映画ではなく、しっかりと奴隷制度の残虐さ、苦しみ、悲しみを描いているのが素晴らしい。
そんな映画ですが、サミュエル・L・ジャクソンからはあまり良い評価を得ていないようです。
それはこの映画の監督や主要キャストにあるようです。
スティーヴ・マックイーン監督(イギリス)
キウェテル・イジョフォー(イギリス)
ベネディクト・カンバーバッチ(イギリス)
マイケル・ファスベンダー(ドイツ)
サミュエル兄が言うには「アメリカは奴隷制度や差別問題に向き合っていねぇ!」ってことだそうです。
「過去の問題も重要だけど今の差別問題に目を向ける事がより大切なことで、勇気がいることだ。」とも言っているようです。
それにこの映画は製作段階でパラマウントが関わっていたけど、黒人差別をテーマにした映画では利益がでないと消極的だったらしい。
ブラッド・ピットの製作会社プランB・エンターテインメントが頑張って作り上げ、いざアカデミー賞を受賞すると、またパラマウントが出しゃばったらしい。
ブラッド・ピットはかなり不快感を覚えたとか?
まぁ、裏方はいろいろあったらしいけど、映画として素晴らしい映画です。
凄くお勧めいたします。
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