「二百三高地」の感想・レビュー(ネタばれあり)

二百三高地二百三高地
★★★☆彡
監督 舛田利男
脚本 笠原和夫
配給 東映
DVD TOEI COMPANY,LTD.(TOE)(D)
上映時間 185分

こんにちは、しんじです

今回は、元旦のように暇な休日ではないと見ないような映画をチョイスしました。

日本の戦争映画大作「二百三高地」です。

この映画は明治時代の列強各国と肩を並べようとする大日本帝国が中国に南下してきたロシアを警戒、そしてロシアが日本攻略のための地固めをする前に、戦争を仕掛けた「旅順陥落ミッション」を陸軍大将乃木希典のぎまれすけの目線、また1小隊の隊員の目から描いた物語になっています。

あらすじと感想

この映画の上映時間は185分もあり、本当に長い映画です。

私はこの映画がTV放映されたとき2夜に渡って放送していたのを覚えています。

当時は小学生か中学生だったので、日本映画の大作という事で見ていただけで、ストーリーの細かい設定など全然理解できませんでした。

今、大人になって改めてみると、明治時代の政府のあせりやまだ日本が軍国主義に染まりきっていない様子など描かれているようです。

当時、アジアは欧米の国々の植民地でした。

日本は江戸から明治時代になり、ある程度世界が見えてきた政府が、アジア情勢を見て焦る気持ちは十分理解できます。

ましてや、欧米に対抗してあの大国ロシアがアジアを南下しはじめれば、日本も危機感を感じるでしょうね。

そんな背景の中、ロシアが中国に地固めする前に、海軍バルチック艦隊が「旅順」に来港する前に、戦争を仕掛けていきます。

二百三高地

さらに映画の伊藤博文(森繫久彌)が言います。

二百三高地

「ロシア相手に勝てなくてもいい。あの大国と引き分けるだけでもいい。そのことによって列強各国に日本の存在を知らしめることができるだろう。」

つまり「極東の島国」である日本が軍力を示すことで外交力を強くする背景が描かれています。

綺麗ごとなしで軍事力=外交力の図式は、ほぼ今も続いていますからね。

こういう背景や台詞を否定せずに使われているこの映画は、まずは極端な反戦映画ではないのがわかります。

この映画は単純に戦争というものが、普通の営みを送っていた人々にどのように影を落としたか。

また、旅順を取り囲むロシアの基地拠点を攻略するためにどれだけの血が流れたか、乃木希典(仲代達矢)の目線を通し、戦争の理不尽さ・不毛さを描いています。

二百三高地

この映画では史実にない架空の人物が何人か出てきます。

その中で小賀武志(あおい輝彦)の「心の変化」はこの映画の大きなテーマになっているようですね。

彼はロシアの文化に傾倒する教師でした。

いわゆるリベラル派ですね。

二百三高地

「戦争が始まる。先生は日本が大好きだが、ロシアも好きだ。この言葉は先生が帰るまで消さないでほしい。」

美しい國日本

美しい國ロシア

彼は生徒に戦争があっても、その国や人々が悪いのではない。という事を教えて旅立ちます。

二百三高地

だが彼は小隊を任され激戦地で死にゆく部下、戦友を見ていき、変わっていく。

彼の心には戦友たちの気持ちや心が乗っかってくる。

その思いが、理屈ではなくロシアへの憎しみに変貌していく過程を映画はまざまざと描いています。

二百三高地

その演技をあおい輝彦が好演していますね。

素晴らしい。

そして故・小賀武志のフィアンセ松尾佐知(夏目雅子)が教壇に立ち、黒板に書こうとします。

二百三高地

小賀の残した言葉。

美しい日本

美しいロシア

それを書ききれない場面は良かったですね。

小賀よりも強いリベラル派だった彼女も「美しいロシア」と書けなかった。

戦争は綺麗ごとではない。

戦争は殺し合いをすること、そこには必ず憎しみと悲しみが生まれることをあの場面で描いているのが素晴らしいです。

映画の激戦地の様子は、「プライベートライアン」、「ハクソーリッジ」で描かれるように、この二百三高地でも同じです。

とにかく悲惨極まりない。

特に日本兵は「ハクソーリッジ」でもそうでしたが無謀に突っ込んでいきます。

軍の命令なら死んでも突貫しなければならない。

二百三高地

牛若寅太郎(佐藤允)と乃木希典のある場面で触れていますね。

二百三高地

歩兵の牛若寅太郎に乃木大将がタバコをあげます。

乃木が歩兵の牛若へ労いの言葉をかけると、

いえいえ、私らは消耗品ですから・・・

乃木の顔が曇り、牛若が「あ、あの口下手なもので(気にしないでください。)」と取り繕う場面も凄く印象深い場面でしたね。

牛若が別に責めるわけでも苛立ちからでもなく、普通に発した言葉だからこそ、この言葉が乃木大将の心に突き刺さったのでしょうね。

私がこの映画をすべて見て一番印象的だったのがエンドクレジットとともに生き残った兵隊が、また戦争前と変わらぬ普通の生活に戻った様子が描かれている場面です。

とくに豆腐屋の木下九市(新沼謙治)が印象的だった。

彼の心の変化などは特に映画の中では描かれていません。

ただ彼はいつも見ていた。

ただ全て見ていました。

二百三高地

彼の目は私たちの目なのだと思います。

彼の心は主張していない。

この目は「あなたは、どう考えますか?」と投げかけているものなのです。

二百三高地

私は彼が前と変わらず明るく豆腐売りをしているのを見て何となく悲しみの感情がわきました。

新沼謙治があの役をやって凄く良かったですね。

新沼謙治、素晴らしい!と言っておきましょう

この映画185分もある映画でしたが、私は眠気がでませんでした。

185分が無駄に長い印象はありませんでしたよ。

なかなか良い映画でした

ただ、いくつか気に入らない場面がありました。

ひとつはインターミッション前、さだまさしさんの「防人のうた」が流れるところ。

せっかく素晴らしい歌なのに、すべて台無しです。

何で歌詞?

カラオケですか??

二百三高地

映画なのですからもうちょっと映像で何かを表現してほしかった。

それと悲惨さを表すためにわざわざカメラに向かって叫んで死んだりする場面が下手すぎでしょう。
わざとらしいというか。

まるで暴れん坊将軍に切られて、「グワッ」とカメラ目線で倒れる悪人みたいです。

そーゆーのいらないから・・・

このような日本映画の慣習的な悪さがあって映画が興ざめになること多々有り。

本当は4つつけたいのですが、上記の理由で3.5です。

まぁ、悪い映画ではないので、気が向いたら観てみてください。くらいの映画かな。

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