1976年オリジナル版(111分)
★★★★☆彡
監督リチャード・ドナー(スーパーマン、リーサルウェポンなど)
配給 20世紀フォックス
DVD 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
父ロバート グレゴリー・ペック(ローマの休日)
母キャサリン リー・レミック
カメラマン デヴィッド・ワーナー(タイタニック)
2006年リメイク版(110分)
★★☆☆☆
監督 ジョン・ムーア(ダイ・ハード/ラスト・デイ)
配給 20世紀フォックス
DVD 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント
父ロバート リーヴ・シュレイバー(大統領の執事の涙)
母キャサリン ジュリア・スタイルズ
カメラマン デヴィッド・シューリス(ハリーポッター)
こんにちは、しんじです
今回は「エクソシスト」と双璧をなすオカルト映画の名作「オーメン」の感想を書きます。
この「オーメン」のオリジナル版は1976年に作られました。
後に「オーメンⅡダミアン」「オーメンⅢ最後の闘争」へと続いていきます。
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そして2006年にはジョン・ムーア監督のもとリメイク版がつくられました。
今回はこのオリジナル版とリメイク版の両方を見比べて、それぞれの恐怖のテイストの違いを書いてみたいと思います。
まず最初に。
僕は断然にオリジナル版が優れていると評価しています。
そこが出発点になってます。
オリジナル版の監督はリチャード・ドナー。
彼は後に「スーパーマン」「リーサルウエポン」などオカルトとは全然ジャンルが違うSF、アクション映画のヒット作を生み出しました。
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リメイク版はジョン・ムーア監督。
後にダイ・ハード/ラスト・デイという最悪な映画を作ってくれましたよね。
想像ですがオリジナル「オーメン(1976)」は、「エクソシスト(1973)」を大分意識して作られたのではないでしょうか。
その証にハリウッド正統派2枚目スターであるグレゴリー・ペックという大物俳優をオカルト映画の主役に起用しているのです。
今もそうですがホラー、オカルト映画はハリウッド映画ではかなり軽視されがちな映画です。
そこにグレゴリー・ペックという大物俳優をキャスティングするなんて、力の入れようがうかがい知れます。
グレゴリー・ペックのキャスティングは、「オーメン」をオカルト映画でありながらもドラマチックな映画へと昇華させています。
それは彼の心情溢れる演技によるものです。
しかし、ダミアンが5歳という設定を考えると、グレゴリー・ペックは少々年齢が上過ぎるかと思います。
新進気鋭の将来有望な人物像としてはリメイク版のリーヴ・シュレイバーの方が本当なのかもしれませんね。
オリジナル版とリメイク版の大きな違いをざっくりと6つの項目で分析してみたいと思います
1.時代
オリジナルは素の70年代の雰囲気を味わえます。
70年代の街並み、ファッション、自動車などがとても味わい深い雰囲気を出しています。
とくに女性のファッションは興味深いです。
また、女性像も異なり、オリジナル版では女性は一歩後ろを歩くような存在に描かれています。
日本的に言えば奥ゆかしい女性像です。
リメイク版は2006年の時代で描きなおされています。
そのため女性像はもっと自律的で自己主張が強く描かれています。
夫婦間でも、本音をぶつけ、男女対等な夫婦関係を描いています。
それぞれその時代を映し出しているのがとても興味深いですよね。
2.カメラワーク
このカメラワークに関しては断然オリジナル版の方が素晴らしいです。
大きな特徴としては物を通しての場面を映し出していることです。
例えばこちら側にある物体の隙間から主人公を映してみたり、2人の会話が実はガラスに映し出された姿であったり、場面場面で効果的なカメラアングルで映し出すカメラワークはとても優れているといっていいです。
リメイク版はカット割り、コマ抜き、カメラをブラすなど機器的技術を生かした効果を出そうとしています。
しかしそれが海外ドラマ的に感じてしまいます。
何となく「24」で用いるような撮影方法っぽくて・・・
ちょっと映画的なカメラワークっぽくなかったです。
3.音響による表現力
音響に関しては断然にリメイク版が凄いです。
とくに乳母の首つりシーンでのロープがきしむ音は凄かった
リメイク版はそれくらい細かい音が表現されています。
それにも拘わらずそれを生かし切れていないジョン・ムーア監督
それはひとえに間の悪さです。
音というのは静けさが合わさるからこそ際立つのです
そこがわかっていないな~!
キャサリンが落下したら、そこで少し間を置く。
カメラマンが首切断されたら、そこで少し間を置く。
先にも書いた通り全体的にカット割りが多すぎるのですよ。
ラストの父親が銃弾で撃たれる場面においてもそれが見てわかります。
オリジナルはピストルのアップと銃弾の音で父親が撃たれたことを表現しています。
しかしリメイク版では多くの映像を事細かに入れてしまうことで銃弾の表現が希薄になってしまいます。
銃弾の細かい音をしっかりと表現できれば、父親が撃たれる場面が脳裏に残る場面になったはず。
無常感を出せたはずなのに。
リメイク版でひとつだけ良い音響効果がありました。
それは何気なく人が嫌悪感を感じる音をこっそりと入れこんでいる点です。
わからないくらいに音のハウリング音とかいれてます(ブレナン神父の部屋の場面)
他の場面でも、人が不快に感じる音を入れているのではないでしょうか。
もしリメイク版を観る機会がある方はチェックしてみてください。
4.音楽
オリジナル版が圧倒的に凄い。
あのゴリゴリのゴシック系クラシックがやりすぎなくらい恐怖を煽ります。
実に効果的なのです。
オカルト映画の代表的な名曲となっています(第49回アカデミー作曲賞も受賞)
「Ave Satani」という曲です。
Youtubeで検索してみてください。
5.キャラクター
オリジナル「オーメン」ではひときわキャラクターが際立った人物がいます。
カメラマンの「ジェニングス」です。
このカメラマンの男が際立ったキャラクターでなければならない理由があります。
それはこのカメラマンが殺される場面がこの映画一番のハイライトシーン🚩であるからでしょう。
オリジナル版ではデヴィッド・ワーナーを起用しています。
彼の中途半端に伸びた髪と面長な顔立ち。
しっかりとキャラ立ちしています。
この特徴的な男が無惨な殺され方をされることで父「ロバートの決意」が固まります。
リメイク版のデヴィッド・シューリスも独特な雰囲気はもっています。
デヴィッド・シューリス
しかしながらオリジナル版のデヴィッド・ワーナーを観た後ではちょっとキャラの弱さが目立ってしまいました。
もっと嫌な奴、もしくは凄く良い奴にしてキャラを際立たせたらよかったと思います。
もったいない。
ただリメイク版でもひときわ煌めいたキャラクターがいましたよね
ブレナン神父です。
ピート・ポスルスウェイトさんが演じています。
彼はとても特徴的、印象的な俳優さんです。
僕はこの俳優さんをとても気に入っています💚
名脇役ですよね。
2011年に永眠されましたが、今もなお映画の中で輝き失せないですね
おおっと!!ベイロックさんを書き忘れるところでした。
オリジナル版で凄い存在感を醸し出しているのは、イギリスの女優ビリー・ホワイトローさんです。
あの存在感は日本の女優さんでも見たことありますね。
岸田今日子さんにそっくりですよね。
そしてリメイク版も負けていません。
あそこまでよく寄せてましたね。
アメリカの名女優ミア・ファローさん、さすがです。
数々の賞を受賞してきた素晴らしい女優さんです。
拍手!👋👋👋
6.恐怖の表現
オカルト映画でもっとも大切な要素ですよね。
オリジナル版はひとつひとつの不吉な出来事が怖いのですが、その全ての不吉がラスト、ダミアン・ソーンの笑みにより強大な禍々しさとなり観客に押し寄せてきます。
ここがこの「オーメン」の本質的な部分なのです。
「全てはダミアンの思惑どりだったのか!!?」
ここに結び付けるためにひとつひとつの恐怖エピソードに敢えてダミアンの直接的な意思入れることをしなかったのです。
その為全ての恐怖はダミアンの無意識から生まれている!?と観客に思わせています。
それがラストの「笑み」によりどんでん返しになっています。
この確信犯的な衝撃は凄いです。
オリジナル版では行間の恐怖を観客に与えているのです。
「さぁ、あなたはどう思う。」ってね。
あのダミアンの笑みは演技なのでしょうか?
あまりにも自然です。
それがまた怖いです
一方リメイク版では、とにかくひとつひとつの場面を敷き詰めてしまいます。
1から10まで映像を入れなければ気が済まないようです
当然、「ダミアンの睨み」「ダミアンの言葉」もしっかりと恐怖エピソードに挟んでしまいます。
全てダミアンが操っている!!
観客がまるわかり状態になってしまいます。
これって最悪ですよ。
映画のラストを自らネタバレさせているようなものですからね。
映画館でとなりの客が囁きます。
「これってダミアンの思惑通りに事を運んでいるんだぜ。」
そんな事を監督が自らやってしまっているのです
たぶんジョン・ムーア監督はオリジナル「オーメン」の素晴らしいところを全然理解していなかったのだと思います
それとも伏線を張るのが非常に下手な監督なのかもしれませんね。
僕がリメイク版で最も気に入らないのが、母キャサリンの夢、父ロバートの夢に現れた邪悪なダミアン😈です。
「あ~あ、やっちまった」
そんな感じでした・・・
ここまでダミアンを邪悪さをさらしておいて、ラストシーンの「笑み」に何の意味があるのでしょうね・・・
そんなんじゃ「あっそ。」で終わってしまします。
致命的・・・
無垢だと思っていた少年が実は思惑通りに事を運ばせていた!??
この禍々しい恐怖こそ「オーメン」なのです。
果たしてダミアンの邪悪は意識的or無意識?
後に、このことがオーメンシリーズでもっとも評価が高い「オーメンⅡダミアン」につながるのです。
少年期のダミアンの苦悩。
自分の意思とは関係なく(?)恐怖を生み出してしまう少年の苦悩と覚醒です。
今回、このオーメンを考察しながら観ていたのですが、わかりました
「オーメン」は「リング」の元ネタだなって。
写真、呪い、謎解き
この3つの要素が「オーメン」にしっかりあるのです。
やはり「オーメン」と「エクソシスト」はオカルト映画の教科書ですね。
素晴らしい映画です
2006年の「オーメン」はひとえに監督の力量不足でしょう。
もっと映画としての多彩な表現力を身に着けてほしいです。
まだ「オーメン」を観ていない人は、まずはオリジナル版を観てくださいね。
お勧めです。
いつもありがとう![]() ![]() 映画レビュー索引ページ |